霊枢『九鍼十二原篇 第一』①

霊枢『九鍼十二原篇 第一』①
第一章~第三章

第一章

一、黄帝問於岐伯曰 

余子萬民、養百姓、而収其租税

余哀其不給而屬有疾病

黄帝、岐伯(きはく)に問うて曰く(いわく)

余は万民を子とし、百姓を養い、其の租税を収む

余は其の給せずして疾病有るに属(つ)くを哀れむ

*1.給は「終」とする(太素の巻二十一、九鍼要道から)

2.子を「いつくしむ」と読むこともある

3.屬=属

[訳]黄帝が岐伯に質問していう。
私は万民を我が子の様に慈しみ、多くの部族を養って衣食と平安を保証し、そのために租税を徴収している。
しかしながらその人民が天寿を全うしないで生涯を終り、病気にかかることを可哀想に思っている。

二、余欲勿使被毒藥

無用砭石

欲以微鍼通其經脈

調其血氣

營其逆順出入之會

令可傳於後世

[訳]余は毒薬を被らしむること勿く、
砭石を用いること無からしめんと欲す
微鍼を以て其の経脈を通じ
其の血気を調え
其の逆順出入の会を営じ
後世に伝う可からしめんと欲す

三、必明為之法令

終而不滅、久而不絕、

易用難忘

為之經紀、異其章

別其表裏

為之終始、令各有形

先立鍼経、願聞其情

[訳]必ず明らかに之が法令を為(つく)り、
終って滅びず、久しくして絶えず、
用い易く忘れ難くす
之が経紀を為り、其の(篇)章を異にし
其の表裏を別たん
之が終始を為り、各々形有らしめん
先ず鍼経を立てん、願わくは其の情を聞かん

第二章

一、歧伯答日、臣請

推而次之、令有綱紀

始於一、終於九焉

請言其道

[訳]伯答えて曰く、臣請う
推して之を次し、綱紀有らしめん
一に始まり、九に終る
請う、其の道を言はん

二、小鍼之要、易陳而難入

粗守形、上守神

神乎神、客在門

未覩其疾

悪知其原

[訳]小鍼の要は陳べ易くして入り難し
粗は形を守り、上は神を守る
神なるかな神、客門に在り
未だ其の疾を覩(み)ず
悪(いずく)んぞ其の原(みなもと)を知らん

三、刺之微在速遅

粗守關、上守機

機之動不離其空

空中之機、清靜而微

其來不可逢、其往不可追

知機之道者不可掛以髪

不知機道、叩之不發

知其往來、要與之期

粗之闇乎

妙哉工獨有之

[訳]刺の微は速遅に在り
粗は形を守り、上は機を守る
機の動は其の空を離れず
空中の機は清静にして微なり
其の来るや逢う可からず、其の往くや追う可からず、
機の道を知る者は掛くるに髪を以てす可からず、
機の道を知らざれば、之を叩くも発せず
其の往来を知るには、之と期するを要す
粗は闇いかな

(巧)妙なるかな、工独り之有り

四、往者為道、來者為順

明知逆順、正行無問

迎而奪之、惡得無虚

避而濟之、惡得無實

迎之随之、以意和之

鍼道畢矣

[訳]往く者は逆と為す、来る者は順と為す
明らかに逆順を知り、正行して問うことなかれ
迎えて之を奪すれば悪くんぞ虚なきを得ん
追って之を済すれば悪んぞ実なきを得ん
之を迎え之に随い、意を以て之を和せ
鍼道畢(おわ)る

参考資料・文献引用
現代語訳「黄帝内経霊枢 上」東洋学術出版
黄帝内経「霊枢訳注 第一巻」家本誠一:医道の日本社

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