霊枢『九鍼十二原篇 第一』②

霊枢『九鍼十二原篇 第一』②
第三章~第五章

第三章

一、凡用鍼者

虚則實之、満則泄之

宛陳則除之

邪勝則虚之

大要日

徐而疾則實、疾而徐則虚

言實與虚、若有若無

察後與先、若存若亡

為虛與實、若得若失

虚實之要、九鍼最妙

補寫之時、以鍼為之

[訳]凡そ鍼を用いる者は
虚すれば則ち之を実し、満つれば則ち之を泄(も)らす、
宛陳なるときは則ち之を除く
邪勝つときは則ち之を虚す
大要に曰く
徐にして疾なれば則ち実し、疾にして徐なれば則ち虚す
実と虚と言う、若しくは有り若しくは無し
後と先とを察す、若しくは存し若しくは亡(な)し
虚と実とを為す、若しくは得、若しくは失う
虚実の要は九鍼の最妙なり
補瀉の時は鍼を以て之を為す

二、寫曰

必持内之、旅而出之

排陽得鍼、邪氣得泄

按而引鍼、是謂内温

血不得散、氣不得出也

[訳]瀉には曰く(之を迎える、之を迎えるの意は)
必ず持して之を内れ、放って之を出す
陽を排して鍼を得れば、邪気を泄らすことを得
接じて鍼を引く、是を内温と謂う(その場合には)
血は散ずることを得ず、気は出づるを得ざるなり

三、補日、随之、随之意

若妄之

若行、若按

如蚊虻止、如留如還

去如絃絶

令左屬右、其氣故止

外門已閉

中氣乃實

必無留血

急取誅之

[訳]補には曰く、之に随う、之に随うの意は
若しくは妄に之き
若しくは行し、若しくは接じ
蚊虻の止まるが如く、留まるが如く還るが如くし
(鍼を)去るには絃の絶えるが如くす
左(手)を右に属せしむれば、其の気は故に止まる
(そうすれば)外門己に閉じ
中気乃ち実す
必ず血を留むること無かれ、
(留血は)急ぎ取りて之を誅せよ

四、持鍼之道、堅者為寶

正指直刺、無鍼左右

神在秋毫、屬意病者

審視血脈、刺之無殆

方刺之時、必在懸陽及與両衛

神屬勿去、知病存亡

[訳]鍼を持するの道は堅きことを宝と為す
正指して直刺し、左右を鍼(はりさ)すこと無かれ
神は秋豪に在りて意を病者に属す
審(つまび)らかに血脈を視て之を刺せば殆(あやう)きこと無し
刺す時に方(あた)っては、必ず懸陽と両衛に在り
神、属して去ることなければ、病の存亡を知る

五、血脈者在瞼横居

視之獨澄

切之濁堅

[訳]血脈は腧に在りて横居し
之を視れば独り澄み
之を切すれば独り堅し

第四章

一、九鍼之名、各不同形

一日鑱鍼、長一寸六分

二日員鍼、長一寸六分

三日鍉鍼、長三寸半

四日鋒鍼、長一寸六分

五日鈹鍼、長四寸、広二分半

六日員利鍼、長一寸半

七曰豪鍼、長三寸六分

八日長鍼、長七寸

九日大鍼、長四寸

[訳]九鍼の名、各々形を同じくせず
一に曰く、鑱鍼、長さ一寸六分
二に曰く、員鍼、長さ一寸六分
三に曰く、鍉鍼、長さ三寸半
四に曰く、鋒鍼、長さ一寸六分
五に日く、鈹鍼、長さ四寸、広さ二分半
六に日く、員利鍼、長さ一寸半
七に曰く、豪鍼、長さ三寸六分
八に日く、長鍼、長さ七寸
九に日く、大鍼、長さ四寸

二、鑱𨩆者、頭大末銳、去寫陽気

員鍼者、鋮如卵形、揩摩分間

不得傷肌肉、以寫分氣

鍉鍼者、鋒如黍粟之銳

主按脈勿陷、以致其氣

鋒鍼者、刀三隅、以發痼疾

鈹鍼者、末如剣鋒、以取大膿

員利鍼者、大如氂、且員且鋭

中身徴大、以取暴氣

毫鍼者、尖如蚊虻喙、靜以徐往

微以久留之而養、以取痛痺

長鍼者、鋒利身薄

可以取遠痺

大鍼者、尖如挺、其鋭微員

以寫機關之水也、九鍼畢矣

[訳]鑱鍼は頭が大きく、末は鋭い、陽気を去瀉す
貝鍼は鍼は卵の形の如く、(筋肉の)分間を揩摩(かいま)す
肌肉を傷ることを得ず、以て分気を瀉す
鍉鍼は鋒は黍粟の鋭の如し、脈を接ずることを主どる、
陥らすことなかれ、以て其の気を致す
鋒鍼は三隅を刃とし、以て痼疾を発(ひら)く
鈹鍼は末が剣鋒の如く、以て大膿を取る
員利鍼は大きさ氂の如く、且つ員、且つ鋭、
中身は微大、以て暴気を取る
毫鍼は尖は蚊虻の喙(くちばし)の如く、静かに以て徐に往き
微かに以て久しく之を留めて養い、以て痛痺を取る
長鍼は鋒は利(と)く、身は薄く、
以て遠痺を取る可し
大鍼は尖は挺の如く、其の鋭は微かに員く、
以て機関の水を瀉するなり、九鍼畢(おわ)る

第五章 

一、夫氣之在脈也

邪氣在上、濁氣在中、清氣在下

故鍼陥脈則邪氣出

鍼中脈則濁氣出

[訳]夫れ気の脈に在るや
邪気は上に在り、濁気は中に在り、清気は下に在り
故に陥脈に鍼するときは則ち邪気出づ
中脈に鍼するときは則ち濁気出づ

二、鍼大深則邪氣反沈病益

故日

皮肉筋脈各有所處

病各有所宜

各不同形、各以任其所宜

無實(實)無虚(虚)

損不足益有餘、是謂甚病

病益甚

取五脈者死、取三脈者恇

奪陰者死、奪陽者狂

鍼害畢矣

[訳]鍼、大(はなは)だ深ければ則ち気反って沈む、病益す、
故に曰く
皮肉筋骨、各々処る所有り
病には各々宜しき所有り
各々形を同じくせず、各々以て其の宜しき所に任ず
実を実すること無かれ、虚をすることなかれ
不足を損し有余を益す、是を病を甚だしくすと謂う
病益々甚だし
五脈を取る者は死す、三脈を取る者は恇す、
陰を奪する者は死す、陽を奪する者は狂す
鍼の害畢(おわ)る

参考資料・文献引用
現代語訳「黄帝内経霊枢 上」東洋学術出版
黄帝内経「霊枢訳注 第一巻」家本誠一:医道の日本社

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